回 | 開催日 | 講師 | 概要 | テキスト |
第1回 | 2021年04月20日 | 前田 恒昭 | VOC's分析講演要旨
揮発性有機化合物(VOCs)は人為的な活動と自然界から放出されており、成分も多く環境への影響も多様である。VOCsについて簡単に紹介し、この中で、光化学オキシダント(オゾン)生成の前駆物質としてのVOCsと長期間暴露による健康リスク(発がん性リスク等)増加が懸念される有害大気汚染物質(Hazardous Air Pollutants : HAPs)としてのVOCs分析について取り上げ、用いられている分析法と測定機器について概要を紹介する。VOC測定に用いている試料採取法、ガスクロマトグラフィーとガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフの検出器、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)の簡単な解説を行う。日本、米国、欧州の観測プログラムで用いている自動分析とラボでの分析法と機器、環境省が運用しているマニュアル記載の方法について概要を紹介する。また、近年増加しているGCを用いた現場分析用分析機器、発生源の測定に用いられているVOC測定機器等についても簡単に紹介する。VOCの観測に必要な校正用標準ガスのトレーサビリティを確保する新しい技術も併せて紹介する。
1、揮発性有機化合物類(VOCs)について
2、揮発性有機化合物類(VOCs)分析法
3、揮発性有機化合物類(VOCs)分析法 試料採取法
4、揮発性有機化合物類(VOCs)の個別成分分析法
ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)
5、VOC個別成分のラボ分析法(環境省のマニュアル紹介)
6、VOCの自動測定方法
7、現場分析で用いる測定機器と技術の進歩
8、その他のVOC測定技術
排ガスや発生源の測定法、リアルタイム測定法等
9、標準物質のトレーサビリティを確保する新技術
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第2回 | 2021年05月11日 | 星 純也 | 東京都における大気中VOC濃度と排出量のトレンド講演要旨
大気中の揮発性有機化合物(VOC)は光化学オキシダント(Ox)の生成原因物質であるとともに、それ自体が毒性を有し、人の健康に影響を与える物質もあります。東京都では1998年度から有害大気汚染物質モニタリングとしてのVOC成分濃度測定データ、2008年度からは100物質を超える多成分のVOCモニタリングデータを有しています。 これらのデータから見える大気中VOC濃度のトレンドをOxの生成影響、有害性リスクの双方の視点から検討していきます。また、それらの排出量についてはPRTR制度による排出量データ、東京都の条例による排出量報告データなどが蓄積されており、排出量のトレンドと環境濃度のトレンドの比較検討を行い、東京都における環境改善状況の評価を試みました。本講演では大規模な大気観測キャンペーンの実施やシミュレーションモデルを用いた解析を行わずに、行政が保有、公開しているデータを活用して、自治体担当者や市民が取り組めるトレンド解析を紹介します。 | ダウンロード |
第3回 | 2021年05月25日 | 鑪迫 典久 | 毒性評価私たちの生活の中には様々な化学物質が溢れています。5月現在でアメリカ化学会(CAS)に登録されている化学物質の種類は1億8200万種に達しています。日本でも化学物質の使用量は増えていて年間10トン以上生産される新たな化学物質が毎年300~400種類程度登録されています。それら化学物質の安全性は化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって管理されています。化審法は策定当初は化学物質によるヒトへの健康被害を中心に考えられていましたが、2003年の改定から動植物への影響にも着目した制度に変わり、水生生物に対する毒性を有するかどうか(毒性評価)が加わりました。さらに2009年の改定で、製造された化学物質が、大気、水、土壌にどの程度分散するかを考慮した曝露評価の概念が生じ、毒性評価と曝露評価の二つを合わせたリスク評価の考え方に移行しました。上記リスク評価の考え方の詳細と、近年話題となっているマイクロプラスチックを例としてリスク評価に当てはめた場合について紹介する。 | ダウンロード |
第4回 | 2021年06月08日 | 中井 里史 | 疫学評価講演要旨
大気汚染による健康影響を評価するために必要な手法の一つである疫学の概念、基本的な方法、そして得られた成果の環境政策への適用や課題について概観します。
内容:
1.大気汚染健康影響評価方法としての疫学
2.健康影響評価の方法
3.曝露評価について
4.大気汚染健康影響評価研究の例:微小粒子状物質等曝露影響調査研究 -成果と課題-
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第5回 | 2021年06月22日 | 伊藤 晃佳 | JCAP/JATOP研究の成果 ~大気環境の変遷とともに振り返る~JCAP(Japan Clean Air Program)とJATOP(Japan AuTo Oil Program)は、経済産業省の補助金などの支援を受け、石油エネルギー技術センター(JPEC)が主体として実施した石油業界と自動車業界の共同研究プロジェクトである。このプロジェクトは、1997年度に開始され、2017年度に終了した。この21年間のプロジェクトの中で、よりよい大気環境を目指し、自動車排出ガス低減に必要な燃料技術や自動車技術について、様々な研究が行われた。その一環として、これらの自動車排出ガス低減による大気環境への影響を評価するため、大気シミュレーションモデルが開発され、入力データとしての排出インベントリの構築、また、モデル検証のための大気観測の実施など、幅広く大気に関する研究が行われ、その成果は、現在でも様々な場面で活用されている。
本講演では、JCAP/JATOPでの主な研究成果を振り返り、当時の大気状況などの情報とともに、まとめて提供する。また、今後のさらなる大気環境の改善に向けて残された課題について紹介する。
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第6回 | 2021年07月06日 | 横田 久司 | 東京都における自動車大気汚染対策1. 大気汚染の歴史
■日本の大気汚染の歴史(大気環境学会史料整理研究委員会)
■自治体の公害防止条例の制定
■総量規制の導入(三重県、東京都の事例)
2. 東京都の主な自動車大気汚染対策
■主な対策・エピソード
■使用過程車対策に関する研究
■1都3県によるディーゼル車走行規制
■権限ない都⇒上乗せ、対決、使用過程車対策
■汚点:公権力を持つことの意味、物産事件(公権力の思い違い)
■アイドリングストップの発想:小空間での通過交通
3. 今後の課題
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第7回 | 2021年07月20日 | 藤谷 雄二 | 凝縮性粒子の測定法と大気環境影響燃焼発生源由来の有機物主体の凝縮性粒子は一次粒子の未把握の発生源として、また、二次有機エアロゾルの未把握の前駆物質として、その重要性が再認識されている。凝縮性粒子は排気中に共存する粒子濃度や排気温度等の測定条件によってガス粒子分配が変化することで凝縮量が変化するため、ある条件のみで凝縮性粒子の濃度を測定するだけでは普遍的な情報が得られない。一方、近年の大気質モデルに使用されている揮発性分布は、粒子ガス分配に左右されない粒子ガスの排出係数の表現法である。本講演では揮発性分布の考え方と発生源におけるその測定手法を紹介する。続いて煙道測定条件あるいは排気ガスが煙突から大気解放された後の希釈倍率や気温の変化により有機エアロゾルや有機ガスの排出係数が変化することを示す。最後に固定発生源由来の凝縮性粒子把握のための課題について述べる。
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第8回 | 2021年08月03日 | 茶谷 聡 | 化学輸送モデルの進展化学輸送モデルは、大気汚染物質の大気中での輸送、拡散、沈着の他、光化学反応による変質や相変化などの物理化学過程による濃度変化を計算するものである。大気汚染のメカニズムの解明の他、大気汚染物質濃度に対する発生源の影響や、発生源からの原因物質排出量の増減による濃度変化を評価するのに有用であり、有効な大気改善策の検討に役立てられている。大気汚染に対する理解の深化に加え、計算手法の開発や計算機の性能向上により、化学輸送モデルは進展を遂げてきた。本講演では、アメリカの環境保護庁が開発を続けている領域化学輸送モデルのCMAQを中心に、化学輸送モデルの各側面の進展と最新の状況、その適用について紹介する。 | ダウンロード |
第9回 | 2021年08月17日 | 篠原 直秀 | 個人曝露評価ヒトの健康を考える上で、実際に摂取する量を把握し、対策の検討や実施を行うことが必要である。
個人曝露量の測定・推定からリスク評価・リスク管理(対策)に繋げていく過程について話します。
また、実例として、現在問題となっている新型コロナウイルス感染に関しても、
どのように曝露評価を行い、対策につなげようとしているのかについて紹介します。
<目次>
1. はじめに
2. 個人曝露とは?
3. 個人曝露量測定の必要性
4. 個人曝露量の導出方法
5. 個人曝露量測定 ~各種事例の紹介~
6. 個人曝露量推定 ~定点測定とモデル~
7. リスク評価、リスク管理
8. 新型コロナウイルス感染症対策における暴露評価とリスク評価
9. おわりに
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第10回 | 2021年09月07日 | 斎藤 正彦 | 大気化学輸送モデル(CTM)の解析事例講演要旨:
大気汚染のメカニズムを説明することがモデル解析で求められている。
ここでは、Probing Toolsと呼ばれる解析ツールを活用して、その解析事例を紹介す
る。
目次
1. 代表的な領域大気化学輸送モデル について
2. 気象モデル(WRF)と大気化学輸送モデル(CMAQ, CAMx)の再現性
3. Probing Toolsによる解析事例
(1) Process Analysis(プロセス解析)
(2) Source Apportionment(SA解析)
(3) Decoupled Direct Method(DDM解析)
4. データ可視化ソフトParaViewによる3D描画
5. 質疑応答
上記4.のParaView用のサンプルデータ data1, data2, data3, data4 は、
https://iiae.or.jp/ のインフォメーション9月7日の定期セミナーで使用するサンプルデータより
ダウンロードしてください。
パスワードが設定されていますので詳細は、セミナで説明します。 | ダウンロード |
第11回 | 2021年09月28日 | 山神 真紀子 | 名古屋市における大気汚染のトレンドと対策講演要旨
環境基準を達成するためには、様々な発生源対策がとられます。微小粒子状物質(PM2.5)は環境基準が定められた大気汚染物質ですが、様々な成分で構成されているため、発生源も多岐にわたります。発生源対策が大気汚染物質の大気中濃度にどのように影響を与えるのか、PM2.5を対象として調査した結果をお話しします。15年以上にわたって観測した名古屋市におけるPM2.5の主要成分の長期変動と、粒子やその前駆物質の排出量との関係を調べ、国内の発生源対策がPM2.5の濃度低下に寄与したのかを評価しました。排出量は名古屋市環境局がまとめている排出量調査や、PRTRのデータ等を活用しました。
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第12回 | 2021年10月12日 | 森川 多津子 | 大気汚染物質排出インベントリーの構築と活用大気汚染物質の排出インベントリとは、大気汚染物質として排出される物質と、その排出量の一覧(目録、inventory)のことを表します。
大気汚染物質には、発生源からの直接的な排出の影響が重要なものもありますし、PM2.5や光化学オキシダントのように、大気中での化学反応により生成するものもありますが、いずれにしても、対策や影響の出た要因を探るためには、大気汚染物質の排出量情報を整理する必要があります。すなわち、大気汚染物質の排出インベントリの作成は、大気環境管理のための最初のステップになります。
本講演では、日本における大気汚染物質の排出インベントリについて、主な発生源別に構築方法を紹介します。現在の課題や活用例、温室効果ガスとの関連についても紹介します。
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第13回 | 2021年10月26日 | 熊谷貴美代 | PM2.5の指標化学物質~測定と動態~PM2.5は様々な成分で構成され、発生源も多岐にわたります。PM2.5の対策を行うためには、PM2.5の組成の把握だけでなく、発生源を特定しその寄与を評価することが重要になります。各種発生源からは指標となる物質が排出・生成されるため、これらの指標物質を測定することで発生源に関する情報が得られます。近年はPM2.5に対して有機エアロゾルの解明が課題になっていることから、本講演では有機エアロゾルに関する指標物質(有機マーカー)を中心に、その測定方法や観測事例について、最近の研究成果を中心に紹介します。 | ダウンロード |
第14回 | 2021年11月09日 | 岩本 真二 | 日本全国におけるPM2.5化学成分時間値の実態PM2.5での二次生成機構の解明や発生源の把握には、PM2.5を構成する多様な成分についての情報が不可欠である。そのため、2011年から全国での成分濃度調査が自治体を中心に開始され季節ごとに2週間の期間で実施されている。しかし、期間が限定されていることや、結果が出るまでに時間を要するなどの問題もあるため、環境省は2017年度から全国10地点でPM2.5成分自動測定機による測定(スーパーサイトと総称する)を開始した。全国規模で、成分濃度の時間値を取得できるようになったことで、PM2.5の汚染状況の把握、発生要因の解明はより進展すると期待される。本講演では、スーパーサイトについての概要とそのデータを使った解析の事例を紹介する。
目 次
1. スーパーサイトの概要
2. 測定データの評価
3. 測定結果の概要
4. 測定結果の解析
4-1成分年平均濃度と経度との関係
4-2 PM2.5高濃度の把握 ①国内汚染、 ②黄砂、 ③越境汚染
4-3 火山の影響
4-4 アンモニアの挙動
4-5 PMF法による発生源寄与推定
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第15回 | 2021年11月30日 | 村尾 直人 | 地域大気汚染の動態解析 ~今なぜ大気汚染か~中国からの越境汚染が激減するなかで、我が国のPM2.5の環境基準達成率も大きく改善し、国内の大気汚染問題は終焉したかと思えるほどである。
なぜ今、大気汚染か、なぜ今、越境汚染解析か、大気汚染研究や大気汚染対策は何を行うべきなのか、などについて、まずは、9月に更新された
WHOのAir Quality Guidelines、中国における最近の大気汚染状況の変化、最近多発する大規模な森林火災などについて、どのように捉えればいい
のかを考えたい。そして、これまで筆者らが行ってきた測定結果を用いた解析(統計的流跡線解析、二つの汚染物質濃度の比を用いた越境汚染評価)
手法について紹介し、今後の展望についてもお話しできればと思っています。
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第16回 | 2021年12月14日 | 紀本 岳志 | エアロゾルの生成過程と測定今回のセミナーは、大気環境中の粒子状物質に関するお話で、特に話題のPM2.5について一緒に考えてみたいと思います。PM2.5とは、大気環境中に存在する微粒子のことで、2.5μmより小さなものとしています。平時、その微粒子は大気環境中で様々に変化しながら存在しています。その変化は、気温、湿度、風、太陽光などの影響と、他の物質による影響などがあります。
そこで、現在のPM2.5の測定と合わせて考察してみることにしました。常時監視測定局などでは、β線吸収法と言う原理を用いて、その物質の単位面積当たりの質量に比例してβ線の吸収量が増加することを利用した測定をしています。また、PM2.5の個別の測定では、米国のFRM法を用いて、電動のサンプラによって試料大気を導入口から一定流量で吸引し、PM2.5 粒子を分粒してフィルタ上に一定期間捕集し、その後、フィルタの採取前後の重量差を求め、その値を試料大気吸引量で除することによって質量濃度を算定する方法を執っています。
微小粒子状物質が、気象や大気中に存在する様々な物質による影響などを考えると、これら測定の方法の違いで、また採取時間等の違いなどから、大気中の同質のものを測っているのではないかも知れない、との懸念から、今まで多くの研究者が調査しました結果などを参考に、お話ししてみたいと思います。
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