過去の特別セミナー

  • 令和4年特別セミナー 第1回 『大気中マイクロプラスチック問題の現状と課題』

    主催  :一般財団法人大気環境総合センター

    開催時間:13:30~15:30(受付13:00~)

    開催形式:ZOOMによるオンライン開催

    講師 大河内博新居田恭弘田村耕平

    詳細プログラムはこちら

    申し込み:要事前登録(ホームページからお申し込みください)

    参加費 :賛助会員 無料、セミナー会員 1,000円、一般 3,000円

    お振込み先:

    ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ)

    店番:018 種目:普通 口座番号:9872334

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    <ゆうちょ銀行口座間、郵便局からのお手続きの場合>

    記号・番号:10160-98723341

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    開催日講師概要テキスト
    2022年01月14日

    大気中マイクロプラスチック問題の現状と課題

    講師(敬称略):
    〇大河内博 『大気中マイクロプラスチックの実態解明と健康影響 
            Airborne Micro Plastics and Health Impact (AMΦ)』

    〇新居田恭弘 『赤外分光法・顕微IR の基礎と大気中マイクロプラスチックへの応用』
    赤外分光分析(IR)は分子振動に基づく赤外吸収を利用し未知物質を同定する分析法である。蛍光による測定データへの妨害がなく,幅広い試料に対して良好な結果が得られる。
    顕微IRは赤外光を凹面鏡で集光でき,主に1mm以下の物質のIR測定に利用される。近年の顕微IRは高感度な面分析手段に発展しており,微小な物質を高速かつ効率よく測定できるIRイメージングが様々な技術分野で活用されるようになってきた。
    大気中マイクロプラスチック(AMPs)の実態解明のため,粒子径10μmを下回る極めて小さなAMPsの検出が求められる。顕微IRにおいて最も高い空間分解能が得られるATRイメージング法を検討した結果,粒径数μmのAMPsの同定が可能となった。更にプラスチックの劣化に高い感度を持つATRイメージングの特性を利用し,環境中での劣化期間の推定について検討した。本セミナーでは,赤外分光分析および顕微IRの原理と仕組み,大気中マイクロプラスチックへのATRイメージングの応用と課題について述べる。

    〇田村耕平 『顕微ラマン分光法の基礎と大気中マイクロプラスチックへの適用と課題』
    ラマン分光法は、レーザーをサンプルに照射してその散乱光を検出することで、物質の定性分析に用いられる手法です。先の講演の赤外(IR)分光法と同様に分子振動に関する情報を取得でき、両者は相補的に用いられます。主に使用される顕微ラマン分光光度計は、レーザーを集光することで顕微FTIRよりさらに小さい1 μm程度の空間分解能があります。この講演では、ラマン分光法の原理や各分野における利用事例とともに、大気中マイクロプラスチックを実際に検出した事例を紹介します。
    あわせて、最新の機能やマイクロプラスチック分析におけるラマン分光法の課題についてもお話しします。

    講演項目:
    1. ラマン分光法の基礎
    2. マイクロプラスチック分析への適用事例・トピックス
    3. まとめ      
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  • 令和4年特別セミナー 第2回 『PM2.5の健康影響』

    主催  :一般財団法人大気環境総合センター

    開催時間:14:00~16:00(受付13:30~)

    開催形式:ZOOMによるオンライン開催

    講師 奥田知明高野裕久島正之
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    申し込み:要事前登録(ホームページからお申し込みください)

    参加費 :賛助会員 無料、セミナー会員 1,000円、一般 3,000円

    お振込み先:

    ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ)

    店番:018 種目:普通 口座番号:9872334

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    <ゆうちょ銀行口座間、郵便局からのお手続きの場合>

    記号・番号:10160-98723341

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

     

    開催日講師概要テキスト
    2022年02月16日

    PM2.5の健康影響

    講師(敬称略):
    〇島 正之 『PM2.5の健康影響に関する疫学研究』
     微小粒子状物質(PM2.5)は、呼吸器系、循環器系をはじめとする様々な健康影響を生じることが知られている。わが国では2009年に環境基準が設定され、達成率は大きく改善している。一方、昨年9月に世界保健機関はPM2.5のガイドライン値として、「1年平均値は5μg/m3以下、24時間平均値は15μg/m3以下」が望ましいと勧告しており、わが国の環境基準より相当低い濃度でも健康影響が生じる可能性を示している。また、PM2.5は大気中での二次生成粒子の占める割合が大きく、発生源が多様であるため、その構成成分と健康影響との関連を評価することも重要である。
     我々は、兵庫県姫路市においてPM2.5をはじめとする大気汚染が気管支喘息に及ぼす短期的な影響について長年にわたって疫学研究を行っている。また、瀬戸内海のほぼ中央に位置する愛媛県弓削島においてPM2.5の成分濃度の測定を行い、島内の学校に通う学生の肺機能との関連について検討を行った。これらの成果を踏まえて、PM2.5が主に呼吸器系に及ぼす影響についてお話ししたい。

    〇奥田知明 『PM2.5の採取・分析と環境動態-サイクロンによる新たなアプローチ-』
    PM2.5に代表される微小な粒子状物質の有害性は、粒子が有する様々な特性に依存するため、その特性の相違に着目した健康影響評価研究の推進は喫緊の課題である。特に、気管支喘息を代表とする呼吸器系や免疫系に対する粒子状物質のリスクに係る信頼性の高い科学的知見の蓄積が求められている。粒子試料採取のために従来用いられてきたフィルター捕集は、化学成分分析には適しているものの、細胞や動物曝露による毒性学的実験のためには、フィルターから必要量の粒子が取り出せない等の多くの問題があった。そこで演者は、フィルターを用いずに粒子状物質の採取を可能とするサイクロン装置を独自に開発し、粒子状物質の毒性学的知見の蓄積に貢献してきた。本講演では、装置開発から粒子の有害性評価へと進展してきた研究の経緯と現状について、特にサイクロン装置の性能評価に焦点をあててご紹介する。

    〇高野裕久 『PM2.5の実験的(毒性学的)研究に関する最近の知見』
    近年、国内外由来の2.5 μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)の健康影響が注目されている。統計学的に、PM2.5の上昇と相関する健康影響として、発癌、全死亡率、呼吸器系や循環器系の疾患による死亡率、それらの疾患の悪化、中でも、気管支炎や気管支喘息の悪化、アレルギーに関わる疾患や症状の悪化等が挙げられている。また、PM2.5による死亡率および有症率の増加や症状悪化を理論づける病態生理学的メカニズムに関しても、多くの仮説と実験(毒性学)的知見が提唱され、これらをまとめ、理解する試みも進展してきている。例えば、呼吸器系にPM2.5が影響をもたらす想定メカニズムとして、以下が挙げられている。

    呼吸器系について
    1)気道や肺に炎症反応を誘導し、より高濃度な曝露の場合、肺障害が発現する。
    2)気道の抗原反応性を増強し、喘息やアレルギー性鼻炎を悪化させる。
    3)呼吸器感染の感受性を増加する。

    一方、PM2.5の構成成分は多様であり、移送時の二次生成・変化も存在するため、健康影響の発現や悪化に寄与する主な成分や要因は明らかにされていない。PM2.5の健康影響を決定する成分や要因を特定するために、最終的には、実際の成分測定を担う大気観測研究とともに、当該成分や要因と健康影響の相関性を検証する疫学的研究が必要となる。しかし、膨大な構成成分よりなり、二次生成・変化を受けるPM2.5のいかなる要素に注目すべきかを明らかにするためには、実験(毒性学)的アプローチを先行させることが不可欠である。換言すれば、病態生理学的メカニズムに立脚したPM2.5成分・要因の影響評価研究を進め、健康影響を決定する真の要因や化学成分を同定し、健康影響をエンドポイントとするPM2.5成分モニタリング対象候補物質(群)の特定につなげることが、極めて重要である。
     
     我々は、気管支喘息の悪化に寄与する主なPM2.5成分や要因を明らかにするため、動物実験とともに、大気環境汚染物質と呼吸器系との最初の物理化学的接点である気道上皮細胞やアレルギー・アトピー成立に関わる抗原提示及び免疫応答を担う免疫担当細胞など、様々な細胞を用いた実験研究的アプローチを進めてきた。当初はフィルター抽出物を対象とし研究を進めたが、フィルターからの抽出物を用いた従来の研究では、PM2.5に含まれる‘抽出可能’な成分の影響を評価することは可能であるものの、不溶性の粒子を含むPM2.5そのもの(全体)の影響を評価することはできない!という致命的な問題を残していた。また、大気中に存在するPM2.5中の成分を、あるがままの化学形態で評価ができているのかも不明であった。その後、「新規採取法及び細胞・動物曝露実験によるPM2.5の健康影響決定要因の同定-環境省推進費CYCLEXプロジェクト」において、曝露実験による健康影響評価に十分な量のPM2.5の確保と、実環境大気中の化学性状を保持したPM2.5の採取を可能とする新規技術を確立し、PM2.5粒子全体を用いて影響評価を実行し、健康影響を決定する真の要因や化学成分を同定することをめざした。
    本講演では、これまでの我々の研究や「新規採取法及び細胞・動物曝露実験によるPM2.5の健康影響決定要因の同定-環境省推進費CYCLEXプロジェクト」の成果を中心に、PM2.5の実験的(毒性学的)研究に関する最近の知見について口述する。
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  • 令和4年特別セミナー 第3回 2050年カーボンニュートラルに向けた社会変革と環境に関する特別セミナー 『第一回 カーボンニュートラルに向けて動き出した我が国のエネルギー政策』

    主催  :一般財団法人大気環境総合センター

    開催時間:13:30~15:30(受付13:00~)

    開催形式:ZOOMによるオンライン開催

    講師 秋元圭吾 コメンテーター 太田幸雄 司会進行 小林伸治

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    申し込み:要事前登録(ホームページからお申し込みください)

    参加費 :賛助会員 無料、セミナー会員 1,000円、一般 3,000円

    お振込み先:

    ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ)

    店番:018 種目:普通 口座番号:9872334

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    <ゆうちょ銀行口座間、郵便局からのお手続きの場合>

    記号・番号:10160-98723341

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

     

    開催日講師概要テキスト
    2022年03月15日

    2050年カーボンニュートラルに向けた社会変革と環境に関する特別セミナー 『第一回 カーボンニュートラルに向けて動き出した我が国のエネルギー政策』

    開催趣旨
    近年、気候変動に伴う集中豪雨等の自然災害が頻発しており、気候変動に対する取り組みは世界的な急務となっています。我が国においても、2020年10月、「2050年カーボンニュートラル」を目指すことが宣言されています。
    2021年10月には、我が国の中期目標として、2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていくとの新たな「地球温暖化対策計画」に加えて、地球温暖化対策のカギを握ると考えられる今後のエネルギー需給構造に対する中長期的政策の基本指針「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。
    エネルギー分野は温室効果ガス排出量の8割以上を占めており、その需給構造の変化は、地球温暖化や大気汚染物質の排出量など、広範な環境問題に加えて、社会・経済にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。
    このような状況を踏まえ、我が国におけるカーボンニュートラルに向けた今後のエネルギー動向についてのwebセミナーを企画致しました。
    大気環境の研究者や自治体の環境担当者、環境計測に携わる技術者など、環境問題に関わる人々にとって、今後の研究や対策に役立つことを期待しています。

    講師(敬称略):
    秋元圭吾 公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)
    『カーボンニュートラルに向けた我が国のエネルギー対策の方向性と政策動向』
    概要:
    2050年カーボンニュートラルを目指すとされた。カーボン
    ニュートラル達成のためのエネルギー対策のあり方について
    解説する。また、それぞれの対策の役割と課題についても
    説明する。技術展望が不確実な中で、全体整合的な
    複数のシナリオを部門別の対策、それへの移行に関する
    解説を行う。更に、これらに対する我が国の政策動向に
    ついて議論する。

    コメンテーター:  太田幸雄(北海道大学名誉教授、IIAE理事)
             『温暖化対策考察』

    司会進行:  小林伸治(元国立環境研究所 IIAE理事)

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  • 令和4年特別セミナー 第4回 『大気中マイクロプラスチック問題の現状と課題 第二弾 』

    主催  :一般財団法人大気環境総合センター

    開催時間:13:30~15:30(受付13:00~)

    開催形式:ZOOMによるオンライン開催

    講師 大河内博小林華栄渡辺壱

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    申し込み:要事前登録(ホームページからお申し込みください)

    参加費 :賛助会員 無料、セミナー会員 1,000円、一般 3,000円

    お振込み先:

    ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ)

    店番:018 種目:普通 口座番号:9872334

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    <ゆうちょ銀行口座間、郵便局からのお手続きの場合>

    記号・番号:10160-98723341

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

     

    開催日講師概要テキスト
    2022年04月13日

    大気中マイクロプラスチック問題の現状と課題 第二弾 

    講師(敬称略):
    〇大河内博(早稲田大学)『大気中マイクロプラスチックの実態と健康影響:国内観測網の構築と観測結果』

    〇小林華栄(日本サーマル・コンサルティング)『O-PTIRの基礎と大気中マイクロプラスチックへの応用』
    赤外分析法は、膨大なデータベースを利用した組成分析が可能で、プラスチック材料
    や生体材料の組成・構造解析に有用な手法です。しかし、従来の顕微赤外法(顕微
    FT-IR)の空間分解能には制限があり(約3~10μm)、微小部の分析が困難である場合
    がありました。
    サブミクロン赤外分析装置(mIRage)は、試料の光熱変換現象を利用した手法で、可
    視レーザーをプローブとして用いるオプティカル光熱変換赤外分光法(O-PTIR:
    Optical photothermal infrared spectroscopy)です。5年ほど前に開発されまし
    た。
    空間分解能は約500 nmであり、非接触の反射モードで従来のFT-IR透過スペクトルと
    よく一致したスペクトルを得ることができます。高速で測定ができる点や、コンタミ
    の懸念がなく、光反射や水蒸気の影響も少なくかつ簡単なサンプル加工で測定が可能
    な点が特徴で、1ミクロン四方から約10センチ四方までの幅広い領域をマッピング可
    能です。サブミクロンサイズの微小粒子や異物などの測定に活用されています。
    本セミナーでは、O-PTIRの基礎と応用例、大気中マイクロプラスチック大気中マイク
    ロプラスチックへを実際に測定した事例をご紹介します。

    主な内容:
    1.O-PTIRの基礎
    2.マイクロプラスチックへの応用例
    3.まとめ

    〇渡辺壱(フロンティア・ラボ)『熱分解-GC/MSの基礎と環境マイクロプラスチック試料への適用』
    マイクロプラスチック(MPs)による環境汚染は、深刻な環境問題の一つとして大きな注目を集めています。MPsは、表面に残留性有機汚染物質(POPs)を吸着させる性質があり、これらPOPsがMPsを介して生物内に取り込まれた後、食物連鎖を通じて人体に蓄積される可能性が指摘されています。そのため、環境中のMPsを分析し、自然界に存在しているMPsの種類と存在量を調査することが求められています。主な分析法としては、顕微ラマン分光法や顕微FTIR-ATR法などが用いられていますが、前者では蛍光性物質を含む試料に対してはラマン測定が困難であり、後者では約10 µm以下の粒径の試料に対しては適用が困難です。一方、試料の前処理が簡便であり、粒子径が数µm程度の微粒子であっても定性・定量分析が可能な熱分解(Py)-GC/MS法は、これら分光分析法の補完的な手法として用いられていますが、質量ベースで定量分析できる特色があります。Py-GC/MS法とは、不溶性試料や複合材料を含むポリマー試料を不活性雰囲気下で瞬間的に熱分解し、その過程で生じた熱分解生生成物をGC/MSで分析して得られるパイログラムをもとに、キャラクタリゼーションを行う手法です。この講演ではPy-GC/MS法の基礎と環境マイクロプラスチック試料の分析例についてご紹介します。
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  • 令和4年特別セミナー 第5回 『富士山頂での大気観測の歴史と研究成果』

    主催  :一般財団法人大気環境総合センター
    共催  :認定NPO法人富士山測候所を活用する会

    開催時間:13:30~15:00(受付13:00~)

    開催形式:ZOOMによるオンライン開催

    講師 土器屋 由紀子野村 渉平鴨川 仁加藤 俊吾横田 久司


    申し込み:要事前登録(ホームページからお申し込みください)

    参加費 :賛助会員 無料、セミナー会員 1,000円、一般 3,000円

    お振込み先:

    ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ)

    店番:018 種目:普通 口座番号:9872334

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    <ゆうちょ銀行口座間、郵便局からのお手続きの場合>

    記号・番号:10160-98723341

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

     

    開催日講師概要テキスト
    2022年05月17日

    富士山頂での大気観測の歴史と研究成果

    講師(敬称略):
    〇土器屋 由紀子(江戸川大学名誉教授、NPO理事)『富士山頂での大気観測の歴史と現状』
    富士山頂で大気観測が始まったのは19世紀後半です。それまで信仰の対象であった富士山頂が、スポーツや科学観測の対象になったのは、欧米を中心とする山岳利用の流れの中にありました。初めに、富士山頂での大気観測の歴史について下記の3つの時期に分けて、それぞれの時期のエピソードなどを紹介します。
    1.19世紀後から1932年までについて。1880年のT. Mendenhallらによる気象観測、1895年秋から冬にかけて82日間の野中至・千代子夫妻による気象観測など、気象庁、富士山測候所が成立以前。
    2. 1932年-2004年の気象庁時代について、台風の砦であった富士山レーダーの建設(1964年)以前とそれぞれの以後、無人化された200年まで、それぞれの時期に行われた業務としての「気象学」以外の大気観測を中心に。
    3. 2005年、測候所の利用の継続を希望する研究者を中心に、NPO法人富士山測候所を活用する会が設立され、気象庁から測候所庁舎を借用し、研究教育目的の運用を始めて15年間における大気観測の変遷について
    次に、現在の管理運営と大気観測の実態について、米国のマウナロア観測所、スイスのユングフラウヨッホ観測所、台湾の鹿林山バックグラン観測所など世界の山岳大気観測所と比較しながら現状を説明し、私見を述べたいと思います。

    〇野村 渉平(国立環境研究所)『富士山頂での大気中CO2濃度観測とその成果』
    1990年代に気候変動の主因である温室効果ガスの動態を調査・解明するために、国立環境研究所では、アジア・オセアニア域を中心に温室効果ガスの観測が開始された。日本においては、近傍で人為的な影響および森林の影響をほとんど受けない北海道東部にある落石岬と沖縄県南西にある波照間島に観測ステーションが設置され、それらの地点での温室効果ガスの観測が実施された。
    他方、経済活動が盛んな中緯度帯に位置する本州においても、その地域の温室効果ガスの排出と吸収の変化をモニタリングする必要があったが、人口密集地帯が広く分布しているため、近傍での温室効果ガス排出・吸収の影響を受けない地点が限られていた。
    2004年に気象庁が管理・運営していた富士山頂にある富士山測候所が無人化され、将来的にその施設が閉鎖される事態に直面した。それを危惧した科学者たちが富士山測候所を活用する目的に2005年にNPO富士山測候所を活用する会が設立された。
    2006年の夏期に国立環境研究所はNPO富士山測候所を活用する会の協力のもと、富士山頂の大気中CO2濃度を観測し、富士山頂の大気中CO2濃度が東アジアの中緯度のバックグラウンド濃度であることを示唆した。富士山測候所は7-8月以外、商用電源が使用不可であり、冬期の室温がマイナス20℃以下に低下するなど安定した観測が厳しい条件であったが、それらの条件下においても高精度・連続的に大気中CO2濃度の観測が可能な観測機器の開発を国立環境研究所が実施し、2009年から富士山頂での大気中CO2濃度観測を開始し、これまで13年間の富士山頂の大気中CO2濃度データの取得に成功した。
    得られた富士山頂の大気中CO2濃度データから、富士山頂の大気中CO2濃度は、東アジア域のCO2排出・吸収の変化を詳細に捉えており、エルニーニョ/ラニーニャ現象に伴うCO2吸収の低下や増加、および新型コロナウイルス蔓延防止を目的としたロックダウンによる人為起源のCO2排出の低下などを明らかにしてきた。国立環境研究所は、今後、富士山頂での観測体制の拡充を行い、CO2以外の温室効果ガス(CH4やN2O)のモニタリングを実施していく予定である。

    〇鴨川 仁(静岡県⽴⼤学、NPO専務理事)『富士山だからこそできる雷の多角的研究』
     富士山は日本で最も高い山というだけなく、孤立峰であり、すぐ周りに大きな山がないためいわば約4 km 弱の孤立観測タワーといえる。4 kmという高度は、雷雲の雲底に届く高度であることから富士山頂で雷観測をすることは、雷雲に直近できるという従来の雷研究ではできないことがなしえる。また観測拠点となる旧富士山測候所には、電源設備及び避雷対策がなされているため、旧測候所での観測は、世界に類を見ない雷雲・落雷直近観測が行える。現在、我々は、雷雲・落雷から発生する高エネルギー放射線の発生源の解明を行うほか、大気化学の研究グループと協力して、落雷起源の大気化合物質の研究も行う。本講演では、これらの成果を示す。

    〇加藤 俊吾(東京都立大学、NPO理事)『富士山での火山性ガスモニタリング』
    富士山は宝永噴火以降300年以上も噴火しておらず、いつ火山活動が活発になってもおかしくない。火山活動を監視ための火山性ガス観測を行う必要がある。富士山頂の旧測候所は夏季以外は無人で商用電源が仕様できない。このような環境でも通年で火山ガスモニタリングを行うため、独立電源で小消費電力・長距離通信が可能なモニタリングシステムの構築についてお話をする。また、多地点で簡便な火山ガス観測がおこなう取り組みについても紹介をする。

    司会進行:横田 久司(IIAE研究員、NPO東京事務所長)
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  • 令和4年特別セミナー 第6回 『光化学大気汚染に関する特別セミナー』

    主催  :一般財団法人大気環境総合センター

    開催時間:13:30~15:00(受付13:00~)

    開催形式:ZOOMによるオンライン開催

    講師 蓮沼 英樹伊藤 晃佳

    詳細プログラムはこちら

    申し込み:要事前登録(ホームページからお申し込みください)

    参加費 :賛助会員 無料、セミナー会員 1,000円、一般 3,000円

    お振込み先:

    ゆうちょ銀行 店名:〇一八(ゼロイチハチ)

    店番:018 種目:普通 口座番号:9872334

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

    <ゆうちょ銀行口座間、郵便局からのお手続きの場合>

    記号・番号:10160-98723341

    口座名義:ザイ)タイキカンキョウソウゴウセンター

     

    開催日講師概要テキスト
    2022年06月14日

    光化学大気汚染に関する特別セミナー

    講師(敬称略):
    〇大井 泰人(環境再生保全機構)『ERCA調査研究紹介』

    〇蓮沼  英樹(兵庫医科大学)『諸外国における光化学オキシダント対策』
     米国と欧州におけるオゾン対策の現状を紹介したい。
    米国では、大気浄化法(The Clean Air Act)により環境保護庁(Environment Protection Agency)が大気環境基準(National Ambient Air Quality Standards)を設定している。大気環境基準の非達成地域として指定された場合、当該地域に該当する州は、大気質を改善するための州実施計画(SIP: State Implementation Plan)を策定することが求められている。
     欧州では、環境大気質指令(Ambient Air Quality Directive) により環境基準が定められている。国別排出上限指令(National Emission Ceilings Directive)では、大気汚染物質の排出量上限値をEU加盟国別に設定し、EU加盟国はその排出上限値を達成するための国家大気汚染規制プログラム(National Air Pollution Control Program)を計画しなければならないことが規定されている。
    米国のSIP、欧州のNAPCPを中心に行政機関からの情報源から、米国と欧州のオゾン対策の現状を調査した結果を紹介するとともに、今後の日本での対策や研究に役立つことを期待する。

    〇伊藤 晃佳(日本自動車研究所)『国内の光化学オキシダント ~発生源対策の評価手法について~』
     大気環境基準の未達状態が続いている光化学オキシダント(Ox)について,光化学Oxの濃度低減のためには,その前駆物質である窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)の排出量低減が必要である.しかし,光化学Ox濃度の低減に関わるレジーム境界(NOx律速やVOC律速と呼ばれる領域の境界)が存在するため,NOxとVOCの量的バランスの違いにより,適切な光化学Ox対策が異なるため,光化学Oxへの発生源対策の効果評価を行う際には,これらの影響を考慮する必要がある.
     本講演では,国内の光化学Ox低減のための発生源対策を評価する手法やツールについて,現状の情報をまとめた.また,これらのツールのうち,大気シミュレーション等を用いた発生源感度解析などの活用例について紹介する.
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  • IIAE令和3年特別セミナー 「未知のPM発生源」~凝縮性粒子とその大気環境影響~ 13:15~16:00(12:45より受付開始)

    開催日講師概要テキスト
    2021年04月14日

    「未知のPM発生源」~凝縮性粒子とその大気環境影響~

    講師 坂本和彦、高橋克行、藤谷雄二、茶谷 聡、森野 悠

    現在、地球温暖化・気候変動、コロナ禍、森林破壊、植生の生育環境変異、昆虫の異常など、地球上では様々な変異・災害が起きています。
    産業革命から二百年以上の間、燃焼などによって、様々な物質が大気中に放出され続けてきました。国内では約50年前に制定された大気汚染防止法により、粒子状物質に関しては「ばいじん」として排出規制がはじまり、監視されているところです。近年は、ばいじんの国内排出量は減少傾向にありますが、未規制である「凝縮性粒子」が、一次排出粒子として直接的に、あるいは二次生成粒子の前駆物質として間接的に、大気中のPM2.5等の粒子状物質へ寄与していることが疑われており、さらなるPMの低減対策のためには、まずは凝縮性粒子の排出実態を明らかにすることが必要です。
    この度、いくつかの環境省推進費で実施された研究によって、凝縮性粒子の排出実態とその環境へのインパクトの一端が明らかになりましたので、その成果を共有するとともに、さらなる展開について皆様と議論する機会にしたいと思います。
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  • IIAE令和元年特別セミナー  『エネルギーと大気環境』 13:00~17:00 (12:30より受付開始)

    開催日講師概要テキスト
    2019年12月10日笠原 三紀夫

    エネルギー利用の推移と新エネルギー技術の現状と課題

    18世紀後半に始まった第一次産業革命では,エネルギー源として石炭を利用し,1950年代には中東などにおいて多量の油田が見つかり石炭は石油へと転換し,さらに1970年代の2回の石油危機により天然ガス,原子力が増加した。近年における世界の一次エネルギー消費量の約85%は石炭,石油,天然ガスを中心とした化石燃料が,約4.5%は原子力が,残り約10.5%は水力発電を中心とした再生可能エネルギーが占めている。エネルギーの利用形態は,図1に示したようにSO2やNOx,ばいじんなどによる大気汚染問題やCO2による地球温暖化に大きく関わり,昨今激しさを増す台風や豪雨など気候変動の要因となっている。
    わが国における大気汚染問題は,全体としては改善傾向にある一方,地球温暖化・気候変動は,世界のCO2排出量は増加傾向にあり,特に近年は開発途上国における増加が著しく,2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めたパリ協定が採択されている。
    地球温暖化を推進するためには,化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が必須であり,わが国では,図2に示した太陽光発電など「発電分野」5種,太陽熱利用など「熱利用分野」4種,バイオマス燃料製造「燃料分野」1種を(狭義の)新エネルギーと指定し,エネルギー源の多様化,エネルギー高率の飛躍的向上を目指し,国策として特に推進すべきものとしている。
     本セミナーでは, ① エネルギーの生産・利用,② エネルギー利用と大気汚染・地球環境問,題,③ 新エネルギー技術,④ 新エネルギー利用の現状と課題,について述べる。

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    河野 吉久

    風力発電の環境アセスメントの現状と課題

    平成24年10月以降,1万kw以上の風力発電所が環境影響評価法の対象になり,また平成25年4月からは配慮書手続きが加わった。2018年12月時点で風力発電所建設計画約250件が審査対象になっている。しかし,これまでに評価書が確定した案件は約20%程度にとどまっている。
    配慮書・方法書を提出してから環境調査を実施して評価書確定までのアセス手続きの迅速化が求められている。一方,事業者はできるだけ早く設備認定や系統連系手続きを進めたいため、事業計画の熟度が低い状態で方法書手続きを開始している。特に、方法書段階で風車配置や改変工事の内容や規模が未定であることから調査点の配置の妥当性が議論できない事例,準備書段階でも採用予定の風車の諸元が提示できない事例,評価書段階でも工事計画の詳細が未定など,発電所アセスの中でも風力は特異な状況を呈している。最近では大型の洋上風力の計画も発表され,審査案件は途切れることのない状況となっている。
    環境影響評価評価法では,定量的な影響予測評価を行うことが求められているが,定量性を担保するために必要な調査が実施できているかどうかといった課題も顕在化している。再生可能エネルギーの導入・促進を図るために自然との共生・調和を目指してアセス手続きを効率的に実施することは重要であるが,科学的にも信頼性のある調査が行われ,予測評価が的確に行われていることが確認できるように事後調査の充実やアセス図書の公開に取り組む必要があることなどについて解説する。
  • IIAE令和元年特別セミナー  『化学物質と大気環境』 13:00~17:00 (12:30より受付開始)

    開催日講師概要テキスト
    2019年11月12日早川 和一

    多環芳香族炭化水素類の環境動態と測定の意義

    世界保健機構 (WHO)は, PM2.5などが引き起こす大気汚染によって世界で毎年数百万人以上が死亡していると警告している。PM2.5は種々の呼吸器系及び循環器系の疾患と関連していることから,既に我が国では大気環境基準が定められている。PM2.5には,ベンゾ[a]ピレン(BaP)に代表される発がん性や変異原性を有する多環芳香族炭化水素(PAH)やニトロ多環芳香族炭化水素(NPAH)が含まれており,その汚染対策も重要な課題になっている。既に,いくつかの国ではBaPに関する大気環境基準が定められ,WHOでも目標値が設定されている。我が国でも早くから,いくつかのPAHやNPAHが中央環境審議会「対策を施すべき優先取り組み物質」に指定され,現在,その対策の実施に向けて準備が進められている。
    PAHやNPAHは有機物の不完全燃焼で生成し,主な発生源には,化石燃料を使用する自動車や工場,暖房施設などの他,焼き畑や森林火災などもある。我が国では,かつて都市や幹線道路周辺で自動車排ガス粉塵による深刻な大気汚染が問題となり, PAH,NPAH濃度も極めて高かった。その後,度重なる自動車排ガスPM,NOx対策が実施されてきた。一方,中国華北の冬は,石炭暖房によるPM2.5汚染が激しく, PAH,NPAH濃度も日本より高い。発生源が違うと発生するPAH,NPAHの量も組成も異なるので,健康影響も同じではない。
    本セミナーでは,今後の大気中PAH,NPAHの測定やリスク評価に必要な知識として,我が国及び諸外国の汚染の変遷と現状を理解し,測定法や曝露評価法,発生源解析法に関する基礎を解説する。
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    奥田 知明

    大気環境研究の新たな視点-粒子の有害性評価・表面積・帯電状態・地下鉄環境-

    試料採取地点(福岡大、慶応大、埼玉県に設置)においてサイクロン式大流量PM2.5新規採取装置で得られたPM2.5粉体試料を細胞・動物曝露を行い曝露影響評価を述べる。
    電極版に電圧を印加することで粒子を帯電状態毎に分別し、OPC(光散乱粒子計数装置)で粒子個数濃度を測定する粒子帯電測定装置を紹介する。
    国内で初めてとなる地下鉄での本格的な調査を行った慶應義塾大学・奥田知明教授のグループによる地下鉄構内の運行状況によるPM2.5濃度の推移等を述べる。
  • IIAE令和元年特別セミナー  『大気環境測定の最前線』 13:00~17:00 (12:30より受付開始)

    開催日講師概要テキスト
    2019年10月15日松見 豊

    スマートモニタリング(超小型大気測定機器、メガデータ、AI)の活用に向けて~現状と課題~

    【概要】
    大気成分のローコストで小型で比較的精度の高い大気環境センサの開発により、1家庭に1個、1人に1個のレベルでの環境計測が可能になりつつある。今後の数年でこの小型計測器の活用を中心に大気環境科学が大きく変革され、第三世代の大気環境科学3.0が始まろうとしている。コンパクトなセンシング技術と小型で高機能で高速なプロセッサの発達により生まれた小型センサ技術だけでなく、携帯電話回線や高速ネット環境などの電子情報網の発達により様々な大量のデータがリアルタイムで集まり、人工知能の応用により解析されて有用なアウトプットを得ることができるビッグデータの情報基盤、さらには様々な技術を総合するスマートシティの構築もこの大気環境科学3.0を進めていく大きな原動力である。我々が行っている小型センサの開発と評価、そして我々が実際に展開している小型センサの応用とその成果について紹介し、さらに小型大気環境センサがもたらす新しい大気環境科学について述べる。
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    中井 里史

    PM2.5 成分分析法の現状と課題

    【概要】
    2009年にPM2.5の環境基準が制定されて10年が経過した。この間の出来事については60回大気環境学会年会「都市大気エアロゾル分科会」でも振り返りが行われるところである。近年のPM2.5の質量濃度は低下傾向にあるものの、依然として大都市圏や瀬戸内地域で環境基準達成率が低い傾向にあり、一層の対策が必要となっている。PM2.5の発生源は多岐にわたるうえ、生成機構も複雑であり、対策は容易ではない。そこで重要なのはPM2.5の成分組成を正しく把握することである。これまでの調査研究でも長期の成分組成観測により、PM2.5の発生源対策とその効果の検証が行われてきた。例えばディーゼル自動車やダイオキシン対策がPM2.5濃度の低減に貢献したことが報告されている。一方、行政には、環境省が作成した成分分析のガイドラインに従って、地方自治体は四季、2週間の観測を行っている(以下、手分析という。)。そのデータの蓄積も進み、活用も行われるようになってきた。さらに2017年からは自動連続測定機を使ったモニタリングも開始され、リアルタイムで成分組成を把握できるようになってきた(以下、自動測定という。)。今後の課題として、手分析では精度管理の充実が必要なこと、自動測定では測定精度の向上が望まれることがあげられる。
  • IIAE 新春特別セミナー『マイクロプラスチック』第二弾

    開催日講師概要テキスト
    2019年01月28日鑪迫 典久

    マイクロプラスチックの生物への影響について』

    講師:愛媛大学 鑪迫典久先生
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    マイクロプラスチック規制に関わる国内外の状況と水環境中での存在実態

    講師:京都大学 田中周平先生
  • IIAE 新春特別セミナー『マイクロプラスチック』第一弾

    開催日講師概要テキスト
    2019年01月21日

    大気と海洋の物質循環

    講師:東京大学 植松 光夫 先生
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    大河内 博

    大気中マイクロプラスチックの研究事始め:現状と課題

    講師:早稲田大学 大河内 博 先生