セミナー

特別企画『自動車の未来と大気環境に関するIIAEワークショップ』

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2020年01月21日小林 伸治

日本における自動車の環境影響の経緯と現状

 これまで自動車の環境問題と言えば、自動車排出ガスによる大気汚染が大きなウェートを占めていたが、自動車の普及と並行して年々強化されてきた排出ガス規制が功を奏し、現在では自動車排出ガスの大気環境への影響は以前に比べて著しく低減されている。その一方で、近年、地球温暖化対策に加えて自動運転や情報技術に関する著しい技術的進展により、自動車は100年に一度の変革期を迎えていると言われており、自動車と環境の関りも大きく変化することが予想されている。このような時代背景を踏まえ、本ワークショップでは、自動車排出ガス規制の経緯を振り返りながら、排出ガス規制が自動車技術や大気環境の改善に及ぼした影響を検証するとともに、今後の地球温暖化対策に基づくエネルギーの変化等を踏まえた自動車の将来像を紹介する。
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柴田 芳昭

自動車の大気環境・健康影響研究の経緯と現状と欧米での最新研究の動向-HEI での最新の健康影響研究等を中心として-

 1952年の英国の“ロンドンスモッグ”事件で、大気汚染(主に煤煙)と健康影響(急性死亡率)の研究が近年の大気汚染の健康影響研究の始まりと言われている。
ほぼ同じ頃、米国の“ロサンゼルスの光化学スモッグ”(主にオゾンや窒素酸化物)と自動車排気の研究が行われ、自動車排気の大気汚染の関連が明らかになり、その後の自動車排気と大気環境・健康影響研究の始まりとなった。
日本では工場排気の健康影響として喘息影響研究が1960年代に始まり、海外での自動車排気の健康影響研究の影響も受け1970年代に沿道における喘息影響研究から始まった。
排気成分としては、NOx、SPM、PM2.5、光化学オキシダントと時代とともに対象物質も変遷してきた。健康影響のエンドポイントも全死亡、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD/喘息)、心血管系疾患、次世代影響、脳神経系疾患と多岐に渡り、現在に至っている。
米国の自動車排気の健康影響研究は、大気浄化法(Clean Air Act)に基づき1980年に米国環境庁(EPA)と自動車メーカーが共同出資で設立したHEI(Health Effects Institute)が中心となって実施してきている。HEIは米国だけでなく、欧州や日本も含めた健康影響の中心的機関であり、HEIの動向が今後の自動車と健康影響研究を考える上で重要となる。
HEIの2020-2025年の研究計画議論の最新動向も紹介する。