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自動車とエネルギー・温暖化問題 その2

2020年10月 IIAEにて、(一財)日本自動車研究所 森川多津子氏が、「今後の気候変動来策と大気環境研究」の題目で講演を行いました。要約は以下の通り。

  1. はじめに
    1824年にジョセフ・フーリエ氏が初めて「地球の温室効果」について指摘してから、2015年にパリ協定ができるまでの間、多くの歴代の研究者等が同様にCO2などの温室効果ガスに
    について語り始め、2015年パリ協定において気温の上昇を1.2℃未満に抑えようと世界が協調の方向に歩み始めた。
  2. 地球温暖化とは
    2-1温室効果と温室効果ガス、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と報告書について
    我が国の地球温暖化対策推進法の紹介から、気候変動枠組条約(UNFCCC)における我が国の温室効果ガスの排出量の実態を、また、UNDFCCCを科学的に支援するIPCCの紹介を通しながら、国際的な見地から、今までの地球温暖化に関する推移を、1995年から国際的に展開されている気候変動枠組条約締結国会議(COP)を通して紹介する。
     IPCCとは、地球温暖化を自然科学的側面から説明し、その影響、適用などの実態と、更にその緩和策などを検討、吟味する国際的な会議である。現在、第五次報告書まで著されている。その報告書の中で、我が国ではどのように対応しているのかを説明している。「気候変動の自然科学的根拠」については第一作業部会が担当し所轄が気象庁であり、その「影響・適応・脆弱性」については第二作業部会でその担当は環境省であり、さらに、「気候変動の緩和」については第三作業部会として経産省が担当している、としている。3省庁では、「気候システムの温暖化には疑う余地がない」として皆で頑張ろう、としている。この第五次報告書には、現在言われている温度の上昇や、海面の上昇などが報告されている。第六次報告書については、2022年を発刊予定として現在進められているが、コロナ禍のためどうなるかは不明である。

    2-2短寿命気候汚染物質SLCPの働き
     CO2などの温室効果ガスに対して、短寿命気候汚染物質(SLCP)の存在が指摘されている。CH4、対流圏のO3などのSLCP物質も、CO2のような温室効果ガスと同様程度の温室効果があることを紹介し、CO2対策と同様にSLCP対策をすることで、その効果は大いに期待される、としている。
     しかし、この対流圏のO3については、直接排出されるものではなく、NOXやVOCなどがさまざまな化学変化の末に生まれるのでの、今後は広角的視野をもって地球規模で、対流圏、成層圏における物質の変化・効果を研究することが必要とされる。
     現在、環境省では汚染物質のインベントリーごとに担当部署が異なるようであるが、世界的には「大気汚染物質」と「温暖化物質」は、ほぼ同じような地域から排出されていることから、今後は温暖化も視野に入れながら、行政的にも研究的にも積極的な総合的な対策が望まれる。

  3. 温暖化に対する国内のシナリオと予測
    3-1国が描く絵姿と将来の自動車排出量
     我が国の削減目標は、2030年の低炭素化、2050年の脱炭素化としてありますが、今後、少子高齢化で、人口は80%ほどになりそれに伴って居住空間が狭まり、移動距離が短縮されて、温室効果ガスの削減につながるとしていますが、他の影響については、例えば、自然災害の増加、海面上昇、農林業への影響、生態系の変化、健康影響などの問題は残る、と懸念されている。
     また、自動車の変化から見た場合、乗用車についてはハイブリット(HV)車や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)が増加して排ガスは減るが、大型車については必ずしもそのようにはいかない、と予測されている。また、タイヤの摩耗、巻き上げ粉塵、ブレーキダストなどは、HVやEVやFCVでもあることなので、今後の研究対策を待たねばならない。
     一方、石炭火力発電所などの固定発生源については、CCSなどの開発で減る部分もあるが、他の大気汚染物質については、不明な部分が多い。

    3-2日本における大気質の予測
     今後、大気汚染物質は減る傾向にあることは、いろんなシュミレーションの結果からいえることではあるが、PM2.5については、必ずしもそうではない。また、オゾンについても、NO2が減ることでオゾンについても生成されないことから、減ると言われている。

  4. おわりに
    4-1関連するトピック(当日紹介)
     菅総理大臣が、2050年には「カーボンニュートラル」、「脱炭素社会」を実現するとの、宣言があった。また、中国では、2035年にはガソリン車をゼロにするとの、宣言が報道された。
     2020年はコロナ禍の影響で、世界的にNOxなどの大気汚染物質は減っていた。
     また、ミラン・コビッチの仮設から10万年周期の氷河期に関して、(これは個人的な興味であるが)現在のCO2濃度では、このままの間氷期が長くなるのではと思っている。

    4-2オゾン層の破壊と国連の取り組み
     2000年にオゾン層破壊が最大になったとの報道に驚きましたが、2020年には少し戻っているとの報道であったが、実は昨年は南極が暖かかったせいであるとされた。フロン、代替えフロンの削減でオゾンホールが1980年代程度に戻ることを期待している。

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