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自動車とエネルギー・温暖化問題 その1

2020年10月 IIAEにて、(公財)地球環境産業技術研究機構 秋元圭吾氏が、「長期気候変動対応のエネルギーシステム-全体システムと自動車部門-」の題目で講演を行いました。要約は以下の通り。

パリ協定では、2℃目標、1.5℃目標や21世紀後半に実質ゼロ排出目標等に言及している。また、早期のネットゼロエミッション実現への要請が強まっている中でネットゼロエミッションに向けては、電力化率の向上と、低炭素、脱炭素電源化は、対策の重要な方向性だと思われる。最終的には電気利用の大幅拡大が重要だが、どのエネルギーキャリアをどの段階で利用すべきかは、全体システムで評価することが重要である。CCU(Carbon capture and storage)の燃料利用は、カーボンフリー水素、電気の一利用形態と見なせる。

蓄電池、水素は、エネルギー、電力の脱炭素において重要なオプションである一方、コストの大幅な低減が不可欠である。コストを見極めながら、適切な需要拡大を志向することは重要である。

厳しい排出削減シナリオ下では、合成燃料(e-fuel)等のCCU技術も経済合理性を有すると評価されるが、排出削減ポテンシャルの規模として貯留(S)は重要である。E-fuelに利用するCO2を化石燃料燃焼由来とする場合には、世界全体でネットゼロのためには、世界のどこかでBECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage),DACS(Direct Air Capture Storage)で排出をキャンセルアウトしておくことも必要なので、その点でも貯留は不可避である。

燃料用CCUは、CO2限界削減費用が世界で不均一の際に、より一層経済性を有する(重要性が増す)傾向がある。
DACSは、コストの不確実性は大きいものの、ネガティブ排出を実現できるため、ネットゼロエミッション目標下では重要な役割となる可能性がある。

エネルギー供給サイドは無論のこと、デジタル技術等を利用したエネルギー需要サイドの技術イノベーションとそれに誘発されるシェアリングエコノミー等の社会イノベーションも極めて重要である。

自動車部門においては、CASEの動向が、カーシェア・ライドシェアの誘発を含め、大きな社会変化をもたらす可能性がある。一方、2050年にほぼEV化すると見ることにも疑問もある。ハイブリッド、プラグインハイブリッド車などの役割も一定程度残る可能性も高く、また、その先には、e-fuelも含めた可能性もあり得る。複数のオプションを引き続き見極めていく必要がある。

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