トピックス

固定発生源からの排ガス分析マニュアル2021年版

固定発生源からの排ガス分析の測定分析方法の改正等を反映させた2021年版が下記URLより閲覧可能です。
https://www.jemca.or.jp/2022/03/23922/

<序>
 大気汚染に関連する発生源は工場等の固定発生源,自動車等の移動発生源,植物・動物・火山活動などの天然起源の発生源と事故や災害による発生源などに大別される。昭和30年~40年代にかけて社会問題となった公害では固定発生源と移動発生源の対策に重点がおかれ,公害対策基本法(現,環境基本法)が制定されて公害防止対策がとられた。これに伴い大気汚染物質の分析方法が定められ,排ガス基準の監視・汚染の低減に用いられてきた。公害対策と研究が進むにつれて大気汚染物質が環境や人体に与える影響も多様化して環境全般の問題へと変化し,これに伴う法整備も進められてきた。1990年後半には長期暴露による健康リスクの懸念から新たに固定発生源からの排ガス基準が定められ,有害大気汚染物質が規制された。また,光化学オキシダント被害低減のために揮発性有機化合物の排出量の規制と低減対策が進められた。
(一社)日本環境測定協会の大気技術委員会では,原案作成団体として排ガス関係の18項目の日本産業規格(JIS)について協会員へのアンケート調査や要望,最新分析技術の調査等を基に新しい技術の進歩に合わせて見直し・改正と新規提案を行っている。JIS改定・制定時には必要に応じて室内及び工場現場での基礎検討を行い,その成果を協会員に提供してきた。
 2011年には規格の記述が専門的で難しい,新しく導入された分析方法の解説が欲しいという要望やJISが使われる根拠や背景,環境分析の技術継承に役立つ解説が欲しいという要望応じてJISで規定している排ガス分析方法を簡便に理解できるようマニュアルを作成し,排ガスを含む環境測定の研究者や技術者,行政の担当者の参考とするために発行した。この発行から10年が経ち,技術の進歩に伴い改定されたJISも多く,また,近年の国際標準化機構が定めた国際規格(ISO)や多成分の一斉分析に合わせた新しい考え方に基づく規格の必要性も増してきたことから大気技術委員会で実施したJIS改正と新規格制定を含めて前回のマニュアルを改定する企画を立て本書の発行に至った。環境測定分析機関で排ガス測定を行っている環境計量士や測定技術者,工場や事業所で排ガス処理や管理を行っている公害防止管理者,国や地方自治体で工場排ガスの規制や調査を行っている職員,技術者,研究者,企業や大学等で排ガス測定に関する分析方法の開発や研究に携わっている技術者や研究者のリファレンスとな
るような内容で構成した。
 2011年の時から改定されたJISは排ガス中の金属分析方法(JISK0083),排ガス中の臭素化合物分析方法(JISK0085)、排ガス中の一酸化炭素分析方法(JISK0098),排ガス中のアンモニア分析方法(JISK0099),排ガス中の硫黄酸化物分析方法(JISK0103),排ガス中の窒素酸化物分析方法(JISK0104),排ガス中のふっ素化合物分析方法(JISK0105),排ガス中の塩化水素分析方法(JISK0107),排ガス中のシアン化水素分析方法(JISK0109),排ガス中の酸素分析方法(JISK0301),排ガス中のホルムアルデヒド分析方法(JISK0303),排ガス中のダスト濃度の測定方法(JISZ8808)である。この他に自動分析計のJISはあるが化学分析法がなかった一酸化二窒素について2018年に新規格(JISK0110)を提案し制定された。また,排ガス中の揮発性有機化合物(VOC)の測定の要求は多いが,国の規制は全揮発性有機化合物(TVOC)でありこの測定法しか示されていない。個別のVOC測定にはガスクロマトグラフ法又はガスクロマトグラフ質量分析法で分離・検出するが,発生源毎に成分が異なり共存成分も多様である。さらに,発生源の種類が多く利用する試料採取方法と検出器の種類も多いので濃度範囲や定量範囲を個別に定める事が困難であり個別規格とすることが適当でない事等から協会員の要請に答えられる形で分析方法を組み立てていくよう検討を行った。ここで,関連するISO・JISを参照し環境省の告示法等を併せて検討を行い,分離例や試料採取方法の実験などを実施して多様な発生源から排出されるVOC全体の測定に適用でき発生源特有の個別成分を分析する新しい方法について規格原案を立案した。今後,JISになるには審議を経て公開される事になるが,審議前の段階なので本書で原案全文の紹介を行う。これに伴い,確認のみで対応してきた排ガス中のベンゼン分析方法(JISK0098)と排ガス中のトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン分析方法(JISK0305)を廃止する事になる。本マニュアルの利用者は新規格制定までは(一社)日本環境測定分析協会が推奨する分析方法とし,これに基づく方法に沿って標準作業手順書を作成し,個別分析の要請やISO/IEC17025の認定申請に利用できるよう解説原案も含めて収録した。
 構成は,固定発生源からの大気汚染物質及び有害物質の規制(第1編),排ガスの採取方法(第2編),JISの排ガス分析方法等(第3編),共通事項(第4編)からなる。付属として機器分析に用いる装置の概要を紹介する。実際に現場で試料採取や測定を行う人が理解できるよう装置・器具,試料ガスの採取方法を写真,図などで示し分析操作はフローチャートで示すなどJISを理解しやすいよう心がけた。
 執筆は,大気技術委員会の委員が分担した。このマニュアルが広く測定機関や環境分析に関係する現場のみならず行政にも利用され,環境測定の改善に寄与する事を期待している。
 最後に,執筆いただいた委員の皆様,出版にご尽力いただいた本協会の関係者の皆様に感謝いたします。
大気技術委員会委員長前田恒昭

<目次>

執筆者一覧
第1編固定発生源からの大気汚染物質及び有害物質の規制
第1章大気汚染の規制
1.1.1環境関連法体系
1.1.2環境基準
1.1.3大気汚染防止法の概要
第2章大気汚染物質に対する規制
1.2.1大気汚染物質に対する規制方式とその概要
1.2.2酸素濃度補正
第3章環境計量
1.3.1計量法
1.3.2計量証明事業
1.3.3環境計量士
1.3.4計量証明書
1.3.5品質管理
1.3.6環境関連の計量単位の新たな方向性
第2編排ガスの採取方法
第1章事前調査
第2章対象設備
2.2.1ボイラー
2.2.2廃棄物焼却炉
2.2.3電気炉
第3章測定準備
2.3.1採取機材リスト及び点検
2.3.2使用前点検
2.3.3採取機材の選定と吸収液,吸収剤等の準備
2.3.4測定者の役割分担
2.3.5前回データ等の確認
2.3.6野帳(採取記録表)への記入例
2.3.7酸素濃度,二酸化炭素濃度,一酸化炭素濃度の測定
2.3.8検知管法
第4章排ガスの採取
2.4.1排ガス採取方法
2.4.2試料ガスの採取位置,採取点,採取口
2.4.3試料採取装置
2.4.4試料ガスの採取
2.4.5試料ガス採取時の注意事項
2.4.6試料の採取
2.4.7試料ガス採取量
第3編JISの排ガス分析方法
3.1排ガス中の金属分析方法(JISK0083)
3.2排ガス中のベンゼン分析方法(JISK0088)
3.3排ガス中の一酸化炭素分析方法(JISK0098)
3.4排ガス中のアンモニア分析方法(JISK0099)
3.5排ガス中の硫黄酸化物分析方法(JISK0103)
3.6排ガス中の窒素酸化物分析方法(JISK0104)
3.7排ガス中のふっ素化合物分析方法(JISK0105)
3.8排ガス中の塩素分析方法(JISK0106)
3.9排ガス中の塩化水素分析方法(JISK0107)
3.10排ガス中の硫化水素分析方法(JISK0108)
3.11排ガス中のシアン化水素分析方法(JISK0109)
3.12排ガス中の水銀分析方法(JISK0222)
3.13排ガス中の酸素分析方法(JISK0301)
3.14排ガス中のホルムアルデヒド分析方法(JISK0303)
3.15排ガス中のトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン
分析方法(JISK0305)
3.16排ガス中のダイオキシン類の測定方法(JISK0311)
3.17排ガス中のダスト濃度の測定方法(JISZ8808)
3.18排ガス中のほう素分析方法(JISK0081)
3.19排ガス中の臭素化合物分析方法(JISK0085)
3.20排ガス中の一酸化二窒素分析方法(JISK0110)
3.21排ガス中のフェノール類分析方法(JISK0086)
3.22排ガス中のピリジン分析方法(JISK0087)
3.23排ガス中のアクロレイン分析方法(JISK0089)
3.24排ガス中のホスゲン分析方法(JISK0090)
3.25排ガス中の二硫化炭素分析方法(JISK0091)
3.26排ガス中のメルカプタン分析方法(JISK0092)
3.27排ガス中の揮発性有機化合物分析方法
第4編共通事項
第1章排ガスの分析用語
第2章物性
4.2.1水の飽和蒸気圧(JISZ8806)
4.2.2等速吸引計算(JISZ8808)
第3章燃焼計算
4.3.1燃焼計算で使用する数値・用語
4.3.2燃焼計算の基礎事項
4.3.3液体・固体燃料の燃焼計算
4.3.4気体燃料の燃焼計算
第4章報告書の例
第5章ばい煙発生施設等の設置の届出
第6章排ガス分析等に関するJIS,ISO等一覧
第7章参考資料(排ガス測定に係る関係法令等)
第5編参考文献
第1章除害設備
第2章共通機器(分析機器の手引き2019より抜粋)
第3章共通機器(科学機器入門より抜粋)

このエントリーをはてなブックマークに追加