セミナー

IIAE令和元年特別セミナー  『エネルギーと大気環境』 13:00~17:00 (12:30より受付開始)

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2019年12月10日笠原 三紀夫

エネルギー利用の推移と新エネルギー技術の現状と課題

18世紀後半に始まった第一次産業革命では,エネルギー源として石炭を利用し,1950年代には中東などにおいて多量の油田が見つかり石炭は石油へと転換し,さらに1970年代の2回の石油危機により天然ガス,原子力が増加した。近年における世界の一次エネルギー消費量の約85%は石炭,石油,天然ガスを中心とした化石燃料が,約4.5%は原子力が,残り約10.5%は水力発電を中心とした再生可能エネルギーが占めている。エネルギーの利用形態は,図1に示したようにSO2やNOx,ばいじんなどによる大気汚染問題やCO2による地球温暖化に大きく関わり,昨今激しさを増す台風や豪雨など気候変動の要因となっている。
わが国における大気汚染問題は,全体としては改善傾向にある一方,地球温暖化・気候変動は,世界のCO2排出量は増加傾向にあり,特に近年は開発途上国における増加が著しく,2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めたパリ協定が採択されている。
地球温暖化を推進するためには,化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が必須であり,わが国では,図2に示した太陽光発電など「発電分野」5種,太陽熱利用など「熱利用分野」4種,バイオマス燃料製造「燃料分野」1種を(狭義の)新エネルギーと指定し,エネルギー源の多様化,エネルギー高率の飛躍的向上を目指し,国策として特に推進すべきものとしている。
 本セミナーでは, ① エネルギーの生産・利用,② エネルギー利用と大気汚染・地球環境問,題,③ 新エネルギー技術,④ 新エネルギー利用の現状と課題,について述べる。

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河野 吉久

風力発電の環境アセスメントの現状と課題

平成24年10月以降,1万kw以上の風力発電所が環境影響評価法の対象になり,また平成25年4月からは配慮書手続きが加わった。2018年12月時点で風力発電所建設計画約250件が審査対象になっている。しかし,これまでに評価書が確定した案件は約20%程度にとどまっている。
配慮書・方法書を提出してから環境調査を実施して評価書確定までのアセス手続きの迅速化が求められている。一方,事業者はできるだけ早く設備認定や系統連系手続きを進めたいため、事業計画の熟度が低い状態で方法書手続きを開始している。特に、方法書段階で風車配置や改変工事の内容や規模が未定であることから調査点の配置の妥当性が議論できない事例,準備書段階でも採用予定の風車の諸元が提示できない事例,評価書段階でも工事計画の詳細が未定など,発電所アセスの中でも風力は特異な状況を呈している。最近では大型の洋上風力の計画も発表され,審査案件は途切れることのない状況となっている。
環境影響評価評価法では,定量的な影響予測評価を行うことが求められているが,定量性を担保するために必要な調査が実施できているかどうかといった課題も顕在化している。再生可能エネルギーの導入・促進を図るために自然との共生・調和を目指してアセス手続きを効率的に実施することは重要であるが,科学的にも信頼性のある調査が行われ,予測評価が的確に行われていることが確認できるように事後調査の充実やアセス図書の公開に取り組む必要があることなどについて解説する。