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環境省へパブリックコメントを提出しました

大気の汚染に係る環境基準について(昭和48年5月環境庁告示第25号)
の一部を改正する件(案)等に対する意見(パブリックコメント)を9月1日にIIAEから環境省に提出しましたので、お知らせします。

 

 

大気の汚染に係る環境基準について(昭和48年5月環境庁告示第25号)の一部を改正する件(案)等に対する意見(パブリックコメント)

2025年9月1日

一般財団法人大気環境総合センター(IIAE)
代表理事 若松伸司
理事 前田恒昭
理事 小林伸治
監事 早川和一
評議員 柴田芳昭

メモ
パブリックコメント募集案内の下記の文章、1.背景 に記載の大気汚染物質に※二酸化窒素と微小粒子状物質の記載漏れがある。
(記)
1.背景
環境基本法(平成5年法律第91号)第16条に基づく大気の汚染に係る環境基準のうち、「人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準」は、「大気の汚染に係る環境基準について」(昭和48年5月環境庁告示第25号。以下「告示」という。)により、物質(※)ごとに環境基準、測定方法等が定められています。
本年3月に環境大臣から中央環境審議会へ大気汚染物質に係る環境基準の見直しについて諮問が行われました。これを受けて、5月、8月に中央環境審議会大気・騒音振動部会大気汚染物質小委員会において、光化学オキシダントに係る環境基準の見直しについて検討を行いました。今般、その結果を踏まえて、告示の改正を行います。
※二酸化いおう、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント

コメント
1, 環境基準を変更するに至った経緯が説明されていない:
環境基本法の第三部、環境基準、第十六条で、『・・・基準値については、常に科学的判断が加えられ、必要な改訂がなされなければならない』と述べられているが、この50年間に亘り見直しがなされて来なかった事の説明が欲しい。パブリックコメントの募集書類では新旧の環境基準値のみが示されており、環境基準の数値を変更しなければならないという検討に入る経緯や、検討結果が全く説明されていない。そもそも、なぜ環境基準を変更しなければならなくなったのかを丁寧に説明すべきである。この事に関する記載を追加をした上で再度、パブリックコメントの募集をすべきである。また科学的知見を踏まえての環境基準の見直しに関する今後の予定や環境基準の見直しを実施するに当たっての仕組みに関しても示すべきである。

2,環境基準が非達成であることに対する説明がない:
光化学オキシダント(オゾン)の環境基準が非達成の地域があるが、これらの地域で環境基準を達成するために必要な施策や対策をどのように行ってきたかという説明がない。環境基準の見直しを行う前に、環境基準が非達成であることについて、国としての努力を明確に示し丁寧に説明すべきである。
従来基準と新基準による最近数年間の環境基準達成率を比較した結果についての説明が必要である。報告書には評価項目の相関図等が数多く掲載されているが、新基準の位置づけを判断するために、従来基準と新基準による最近数年間の環境基準達成率の情報を参考資料として示していただきたい。環境省としては示しにくい情報かも知れないが是非お願いしたい。

3. 被害を無くすという観点が抜けている:
報告書3.3.3.2では8時間平均値について整理されているが、そもそも、光化学オキシダントの被害は日中の高濃度オゾンが出現する時に起きており、夜間の高濃度オゾンによる被害が報告されている事例があるのか。環境基準として設定するには、被害をなくし健康で快適な環境を達成すべきであり、「特定の時間帯の8時間値ではなく日最高8時間値を選択することが適切である」という点が、被害発生を防ぐ上で適切である理由を示すべきである。過去の被害発生は8時間値ではなく1時間値で高濃度が出現することに起因しているのではないか。8時間値の選択が被害を無くす上で妥当である事との関係について科学的に説明すべきである。

4. 一時間値について:
高濃度オゾン発生と被害への対策の記載がない。少なくとも高濃度オゾンが出現する地域がある限り1時間値は残すべきではないか。また、特異的な高濃度オゾンが発生する事の機構解明や原因解明と対策をすることが本来の環境基準設定の趣旨に沿うのではないか。
3.3.3で「環境基準の設定とは別に、現在も運用されている光化学オキシダント注意報・警報の発令と同様の措置を検討することが期待される。」と記述されているが、環境基準が変更された後に具体的にどのような処置をとることができるのか明確でない。注意報・警報が発令される基準に変更がないのであれば、具体的な処置について示すべきである。また、第5章のまとめではこの内容が反映されていないので、注意報・警報を発令する具体的な基準について、環境基準とは異なる数値を用いることになるのか否かも含め示すべきである。

5,既存の各種の数値や指標値との整合性について:
4,でも述べたが高濃度光化学オゾン発生にかかる注意報値、警報値や光化学大気汚染対策効果評価のための指針値(環境省)、日生成オゾン量(川崎市)、などと新基準値の関連性評価、整合性評価を行い、これらの数値や指針値の活用法を示す必要がある。

6,有効数字:
有効数字の取り扱いが誤っている:環境目標値の導出では、以下に示すように有効数字の表記が誤っている。根拠とする前に精査し整理すべきである。
・3.3の定量評価については、有効数字の取り扱いが誤っている箇所が散見される。有効数字が異なる数値を用いて評価を行うことは誤った結果を導き出すことにつながるので、再度、精査を行うべきである。いうまでもないが、ppmで一桁の表記、二桁の表記と三桁の表記では表す数値の範囲はすべて異なる。3.3.1の表2はこれらを考慮していない。また、本文中でも暴露濃度0.04~0.12ppmに対して平均0.080ppmの暴露や平均濃度0.072ppm以上の暴露のように有効数字が異なる表記があり、表4も含め再検討を要する。3.3.2でも単位はppbであるが有効数字の取り扱いが異なっている。4章も同様である。
・3.3.2の濃度水準の検討の内容では単位がppbで表記されており、平均値15.9ppb(0.0159ppm)のように環境基準に相当する0.06ppmを議論するには有効数字だけでなく表記単位も整理するべきであるが、そもそも検討すべき数値としての妥当性を示すべきである。

7,環境基準値の有効数字:
オゾン濃度の自動測定機器は、PPB単位の測定精度があり、平均値の計算結果はPPB単位の数値が有効である。新基準値は、『オゾンとして、8時間値が0.07ppm以下であり、かつ、日最高8時間値の1年平均値が0.04ppm以下であること。』とされたが、有効数値を考えた場合、

0.07ppmは、ppbのレベルでは、0,065~0.074の範囲に相当する。
0.04ppmは、ppbのレベルでは、0,035~0.044の範囲に相当する。

例えば、環境基準値の適合度評価において、平均値の計算値が0.065になった時は、環境基準不適合と判断されるが、その解釈で良いか?

8,光化学オキシダント基準という名称:
今回の改訂ではO3が指標になるので、海外に合わせて名称もオゾン環境基準にした方が良い。オゾンとオキシダントの取り扱いに問題を感じる。

環境省の定義では光化学オキシダントは、オゾン、PAN、酸化性物質とされており、測定はオゾンとして測定するとしており、環境基準物質は光化学オキシダントなので論理矛盾がある。

9, 長期基準の必要性:
長期曝露の健康影響が示されている研究は殆ど海外のものであるが、海外では長期曝露基準は8時間値の短期基準によって長期曝露の健康影響も防止できると考えられることから設定されていない。日本だけ長期基準値を持つ必要性が明確になっていないように思われる。(大気モニタリングデータ解析結果で短期基準に対応する年平均値は0.03~0.04ppmまたはそれ以上と考えられるとの指摘のみ)
必要性の低い基準は作らない方が良いと考える。

10,成層圏オゾン:
環境基準値の適合度評価において、発生源対策が出来ない成層圏オゾンの影響はデータから除外すべきである。成層圏オゾンの対流圏下層部への寄与程度に関してはモニタリングデータや気象観測データから十分に評価が可能である。(詳細は技術提供可能)

11,平均化時間と評価期間:
オゾンのモニタリングデータは分単位で活用が可能である。また評価期間は1年とされているが、複数年の評価も有用と考える。

12, 複合影響:
光化学オゾンの生成時には二次生成微小粒子の濃度も高くなるので、複合影響評価が重要である。また、高温による健康影響と光化学オゾンなどの関連性も検討すべきと考える。

13,二次基準:
光化学オゾンが及ぼす、生活の質QOLや経済面への影響(視程の悪化など)、森林生態系への影響、農作物への影響、食糧生産への影響などの評価をすべきである。

14,長期曝露評価とリスク評価:
総ての生活時間帯での光化学オゾンの曝露評価(外、通勤、家庭、職場)とリスク評価が必要である。

15,広域的評価と対策の必要性:
光化学オゾンの生成と分布は広域的なので、これに対応したモニタリング地点の配置とデータ解析がなされなければならない。
かつて自動車による都市型大気汚染が大きな問題だった時代に現行の自動車排ガス測定局と一般測定局が設けられたが現在では主要測定項目で両者の差は無く自動車排ガス測定局の意義は小さくなったと言えよう。現在の日本の大気環境を良くするためには、自動車以外の発生源(薪ストーブ,発電所・製鉄所・製油所などの固定発生源や船舶・航路、突発的な森林火災など)が無視できない場合もある。これらに対応した測定局の設置は効果的と考える。
都市の2000年以降の燃焼由来物質(例えばPAH類)濃度は自動車対策で激減し今や清浄地点との差は殆ど無い。さらに日本海側の都市では,アジア大陸からの越境輸送が測定値の大部分を占める所がある。むやみに増やす必要はないが,これらに対応した測定局の設置は効果的であると考える。
地球温暖化の進行や、その対策を進める中で大気環境をめぐる状況は大きく変化しており、これまで実施されて来なかった化学物質や物理項目に関してのモニタリングの検討も光化学大気汚染対策を進める上で必要となっている。
また、広域的に生成・移流する光化学オゾン対策を進める当たっては、地方自治体単独では対応出来ない場合もあり地域連携モニタリングと対策が不可欠である。更には国外からの越境光化学大気汚染対策に当たっては国際協力や国際連携によるモニタリングと対策シナリオ構築が図られなければならない。現在、地方自治体では測定局の配置とその見直しが行われているが、広域的評価や越境汚染対策を行うという見地から国として必要な配置や測定項目について積極的に関与する必要がある。

付記
本コメントは、IIAEのHPに掲載して公表します。

本件に関する環境省の書類等
大気の汚染に係る環境基準についての一部を改正する件等に対する意見の募集

環境基準改正

光化学オキシダントに係る環境基準の見直しについて

大気汚染物質小委員会報告案

 

 

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